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「みなし残業があるから、残業代は出ません」と言われていませんか。
入社前に「固定残業代○時間分込み」と説明を受けて、なんとなく納得した方も多いと思います。 でも実際に働いてみると、決められた時間を大きく超えて残業しているのに追加の支払いがない、その「おかしい」という感覚は、正しい場合がほとんどです。
みなし残業(固定残業代制度)は、条件を満たせば合法です。 しかし現実には、違法な状態で運用されているケースが非常に多い制度でもあります。 この記事では、固定残業代が違法になる具体的な境界線、実際に損している金額の計算方法、そして未払い残業代を取り戻す手順を、労働基準法の条文をもとに解説します。
みなし残業が「おかしい」と感じる直感は正しい
まず結論から言います。
みなし残業(固定残業代)制度は、3つの条件を満たさなければ違法になります。 そしてその条件を満たしていない職場は、決して珍しくありません。
みなし残業(固定残業代)とはどんな制度か
みなし残業とは、「毎月一定時間分の残業代をあらかじめ給与に含めて支払う」という制度です。
たとえば「固定残業代40時間分・3万円込み」であれば、月40時間までの残業代はすでに支払い済みとみなされます。 ただしこれには、いくつかの厳格な条件があります(労働基準法第37条)。
この3条件を1つでも欠いていると、会社は全残業時間分の残業代を支払う義務が生じます。 「合意して入社したから仕方ない」という考えも誤りです。労働基準法第13条は「この法律で定める基準に達しない労働条件は無効とする」と明記しており、違法な条件への合意は法律上無効となります。
「求人票に書いてあった」だけでは不十分
「求人票に固定残業代込みと書いてあったから合法」という思い込みは危険です。
求人票の記載だけでは不十分で、実際の雇用契約書または労働条件通知書への明記が必要です。 さらに、超過分の追加払いが実際に行われていなければ、その運用自体が違法になります。
- 雇用契約書に「固定残業代○時間分・○円」と時間数と金額が両方書かれている
- 給与明細で基本給と固定残業代が別々に記載されている
- 固定時間を超えた月は、超過分が追加で支払われている
この3点が全部「YES」であれば合法の可能性が高いです。 1つでも「NO」なら、未払い残業代が発生している場合があります。
みなし残業が違法になる5つのパターン
「おかしい」と感じたとき、それが実際に違法にあたるかを確認しましょう。
以下のどれかに当てはまる場合、会社に残業代の追加支払い義務が生じている可能性があります。
特に多いのがパターン1とパターン2です。 タイムカードや業務記録を手元に用意して、実際の残業時間と支給された残業代を照らし合わせてみてください。
実際にいくら損している?残業代の計算方法
「なんとなく損している気がする」を、具体的な金額に変えましょう。
未払い残業代は計算してみると、月数万円・年間で数十万円になることは珍しくありません。 しかも、退職後2年間(2020年4月以降の分は3年間)は請求権が消滅しません(労働基準法第115条)。
残業代の計算ステップ
具体的な数字で計算してみる
月給28万円(固定残業代40時間分・4万円含む)で、実際に月60時間の残業をしているケースを例に計算します。
ステップ1: 計算基礎賃金を出す
固定残業代を除いた基本給は 28万円 - 4万円 = 24万円。 ※役職手当・職務手当などは計算基礎に含めます。通勤手当・家族手当など法律で除外が認められている手当(労働基準法施行規則第21条)は除外できます。
ステップ2: 残業単価を出す
月の所定労働時間を160時間とすると、1時間あたりの賃金は 240,000円 ÷ 160時間 = 1,500円。 時間外労働(月60時間以内)の割増率は1.25倍なので、残業単価は 1,500円 × 1.25 = 1,875円/時間。
ステップ3: 差額を計算する
固定残業代でカバーされるのは40時間分まで。 超過した20時間分(41〜60時間目)の未払い残業代は 1,875円 × 20時間 = 37,500円。
毎月37,500円の未払いが発生している計算になります。 これが3年続けば、37,500円 × 36ヶ月 = 135万円の未払い残業代です。
給与明細の各手当が何に基づいているか不明な場合は、給与明細がおかしいときの確認ポイントも参考にしてください。
「みなし残業だから仕方ない」という会社の言い訳への反論
「固定残業代があるのだから、何時間残業しても追加の給料は出ない」、そう言い切る会社は少なくありません。
ただ、これは会社に都合のよい解釈です。 法的には「みなし時間を超えたら超過分を払う義務がある」のが原則であり、払わないことは労働基準法違反にあたります。
| 会社側のよくある説明 | 法律上の正しい解釈 |
|---|---|
| 「固定残業代があるから残業代は出ない」 | 固定時間を超えた分は追加支払い義務あり(労基法§37) |
| 「みなし残業制で採用したから問題ない」 | 3条件(明示・超過払い・区分)を満たさなければ違法 |
| 「残業代込みで入社したのだから文句は言えない」 | 違法な条件への合意は無効(労基法§13) |
| 「うちの業界は全部このやり方だ」 | 業界慣行は違法行為の免責にならない |
「入社時に合意した」という罪悪感を持つ必要はありません。
労働基準法が定める基準に達しない労働条件は、当事者間の合意があっても無効とされます。 制度が違法に運用されているのであれば、それは会社側の問題です。
未払い残業代を取り戻す4つのステップ
ここからが実際のアクションです。
「会社に言いにくい」という気持ちはよくわかります。 でも、最初のステップは「証拠を集める」ことなので、会社への申し出は後回しで構いません。
労働基準監督署への相談方法や申告の手順は別記事で詳しく解説しています。
「会社に言えない」という壁を越えるために
残業代の請求を躊躇させる最大の理由は、「上司との関係が悪化する」「会社に居づらくなる」という不安です。
そう感じるのは当然のことで、一人で抱えているとなかなか動けなくなります。 ただ、いくつかの相談窓口を知っておくと、状況は変わってきます。
一人でできる「最初の一歩」
- 厚生労働省の「総合労働相談コーナー」に匿名で電話・来所相談する(全国の労働局・ハローワーク内に設置、無料)
- 弁護士や社労士の無料相談を利用する(初回無料の法律事務所も多い)
- 労働基準監督署に匿名で申告し、会社への調査を求める
- 個人加入できるユニオン(合同労組)に入って団体交渉を求める
人によっては、会社に直接言わずに外部機関を通じて問題を解決できる場合があります。 厚生労働省が公表している「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を見ると、固定残業代の違法運用で是正勧告を受けた企業が多数あります。「自分だけが変な会社にいる」わけではありません。
それでも、この職場でいいのか迷っているあなたへ
残業代の問題を解決したとしても、「そもそもこの会社でいいのか」という問いに向き合う人もいます。
未払い残業代を請求できたとしても、会社の体質が変わるとは限りません。 「みなし残業を使って人件費を削減する」という方針が続いている限り、同じ問題が繰り返される可能性があります。
サービス残業は違法。残業代を取り戻す全手順と対処法を参考にして、まずは手元でできるアクションをやり切ってみてください。 それでも職場が変わらないと感じたとき、環境を変えることを考えるのは逃げではありません。
よくある質問
Q1. 固定残業代40時間分と書いてあれば、40時間残業しても残業代は出ないの?+
Q2. 雇用契約書に「残業代込み月給25万円」とだけ書いてある場合、何時間分と見なされる?+
Q3. 未払い残業代の時効はいつ?退職後でも請求できる?+
Q4. 残業代を請求したら、嫌がらせや不当な扱いを受けることはある?+
Q5. 固定残業代60時間分というのは合法?金額が少ない気がするが確認方法は?+
次のステップとして、サービス残業の全手順と対処法もあわせて読みながら、まずは手元の記録を集めることから始めてみてください。